もう去年の話になりますが、ボークスで開催されたDWC Dollfie World Cup ドールメイク選手権でわたしのメイクしたドールヘッドが優秀賞をいただき全国大会に参加できました。
ちなみにボークスニュース内にはこんな感じで掲載されていました。
ドルパ44でこんな感じで飾られてました。メイク自体は人を選ぶものなので、当然優勝なんかできるわけないわけですが、こういう風に最終選考まで行って会場で飾られただけでも嬉しく、元々コロナの関係から行く気はなかったのですが、たぶん今後はないであろう自分の作品が会場で飾られているのをみたいがためにドルパまで行って記念写真撮りまくってました。
こんな感じで大変よい結果で終わりましたが、作業の振り返りもかねて、どういう風なメイクを行ったかをちょっと解説しようかと思います。今後、ほかのメイク選手権等コンテストに参加する方の参考になれば幸いです。
DWC Dollfie World Cup の概要
今回の大会のレギュレーションはこんな感じです(リンク先のボークスのサイトの内容を抜粋https://dollfie.volks.co.jp/event/dwc/2020/entry.html)。内容的にはかなり自由度が高いです。
- DWC2020オフィシャルアイテム DWCヘッドのみを使用する。
- ドルフィーヘッドのメイクアップ技術と感性、その愛と情熱、創造性を競う
- メイクのカスタム方法や使用する材料は自由
- タトゥーやトライバルメイク、ラインストーンなどデコレーションパーツの使用も任意
- ヘッドには必ずボークス製のドールアイを取り付ける対象のアイ:造形村グラスアイ・HGグラスアイ・ドルフィーアイ・アクリルアイ・アニメティックアイ)
- ヘッドの造形を削る、パテを盛るなどのカスタムは可能。但し、頭のサイズの変更や規定のDWCヘッドと判断できない過度な改造は審査対象外
- 作品のテーマは『自由』。
メイクの構想
一応複数応募が可能だったので、2点で応募することにしました。1点はオーソドックスなメイクで、もう一つは徹底的に攻めた方向性のメイクのヘッドにしました。今回は、後者の攻めたメイクのヘッドで賞を頂きました。タイトルはズバリ、「アンドロイド少女」です。そちらのメイクはこんな感じの構想を練りました。
- 一見で審査する人の目を引く題材のメイクにします。今回は、自分の大好きなメカ娘的メイクにすることにしました。
- わざわざレギュレーションにデコパーツなどがわざわざ書いてある、ということはなるべくそのような特殊な材料を使った方がよいという深読みで、なにか装飾のデカールやスワロフスキーなどを貼りたい
- スワロフスキーをつけるのはオーソドックスなメイクで提出した方で採用
- メイクカスタム方法や材料規定なしなので、特殊なメイクにすることにします。今回は、ドールメイクではほぼ使われないメタリックラッカーを使うことにしました
メイクの手順
ヘッドはクールなメカ娘を目指したので、そのイメージに合うDWC-02ヘッドのフレッシュ色を選択しました。メイクに使用したのは、主にガイアノーツ社のラッカーです。
メカ娘なのでヘッドに頭部が分割されたような線を入れて、顎から耳までに金属を想起させる鮮烈なメタリックブルー色で塗装します。この工程では、ガイアノーツでこのちょっと前に新製品で発売されたプライマリーメタリックブルーでエアブラシを使ってマスキング塗装しています。この塗料は普通のメタリック系塗料と異なり、塗料に含まれている金属粉末自体に色がついているため、通常の顔料系ラッカーと同じような扱いで塗装できることが特徴です。
特に今回のヘッドは、この塗料なしでは成り立たないメイクになっています。というのは、これと同等のメイクを既存のラッカー塗料で行うとキャンディ塗装というシルバーの上にクリアーのブルーを塗装するという2重塗装が必要になりますが、2回目に塗装するクリアーのブルーは染料系の塗料なので、ソフビに一度触れると素材にしみこんで薄め液でも消せなくなるからです(ドールに着せた服の染料がソフビに移染するのと同じ)。そうすると細かい修正ができませんから、メイクには使うことが困難な技法です。そのため、この特殊塗料で今回はブルーの金属的な質感の部分を描いています。
この塗料のエアブラシ塗装後に十分乾燥させたあと、いくらかデカールを貼っています。正直、ここらへんは正面写真とかからだとわからないのが残念ではありますが、メカを想起させる文字や記号のメタルフィルムベースのデカールを色々貼ってます。ヘッド裏にも給電プラグを意識したシンボルと「感電注意!」という時が書いてあるデカールが貼ってあったりしますが、ウィッグかぶせるとわからないのがちょっと悲しいです。まぁ、サイバーパンクな漫画やアニメだと首にある方が普通ですけど(主に攻殻機動隊)。
デカールを貼った後にクリアーを塗装して剥がれないように固定します。
分割線やまつげ、眉毛を含む基本メイクはブラックとブラウンのラッカーで行ってはいますが、シルバーを重ねて塗ることでメカ的な感じを出すようにしています。
口のところはニヒルな笑いを出す感じで少し開口した感じで描きました。
今回は描くのに1週間ぐらいかけていますが1度描いた後、翌日に再度見てみたり写真に撮ったりと客観視してバランスなどに間違いがないかを途中途中で確認しています。
あらかた描いたあとに、メイク部分以外にマスキングしてクリアーをエアブラシで軽く吹いてメイクを固定します。艶消しではないのは、メカ娘メイクなので金属的な質感を出すためです。
このあと頬などにエアブラシやパステルを使って薄めにチークを入れ、さらにチークを固定するために、メイク部分をマスキングしたあとにすごく薄めで艶消しを吹きます。
あとは頬にデカールを貼りました。これはデジタル的なイメージで、ハイキューパーツ社のヘックス迷彩用デカール2のブルータイプの六角形の組み合わせの模様のデカールを使っています。デカールを張った後に、さらに艶消しを吹いて固定して終了です。
製作後の雑感
カスタムの内容的には上記のような感じですが、とにかく手間がかかるので、同じようなのは何度も作りたくはないですね(笑 でも、完成したときには「やりきった!」という達成感があってよかったです。
ちなみにレギュレーション内のどんな材料も使って~の部分から、本当はマイコンを使った電子的なギミックを搭載することも考えたのですが、さすがにそれはメイクじゃないだろ、と判断されそうだったのでやめたのでした…
色々と苦労しましたが、結果的に優秀賞+全国大会出場まで行ったので満足です。
ギャラリー
そんなわけで、このヘッドを使って4月に色々撮影していたので、そちらの写真を色々と。ボディは透明プラスチックが採用されている、Smart DollのCrystal Cortex版を使用しています。シルバーの内部フレームを意図的に見せることで、アンドロイド感を出しています。日光がボディを透過する感じがうまく出るように意識して撮影しています。